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勝手にレビュー



Husky Town by sachi
'02/01/26 UP



もの哀しげな。もの淋しげな。儚げな。切なげな。
いろんな形容詞が思いつく歌です。

一つの季節が終わりを告げた------。短くも、深い「真夏」。
すべてが過ぎ去ったとき、残されたのはわずかな痛みだけだった。「真夏のかけら」はもうどこにも残っていない。
戻ってきた元の世界には、冷たい「風」が吹き、そして、「雨」が降っている。
「季節」は私を追い越していく-----止まってしまった私の心を。
…でも…。

止まっていても、仕方がないから。勇気を出して、心の時計を動かそう。
何も無かったふりをして。
元の世界へ、戻っていこう。


こんな感じかなぁ〜、私の思い描く風景は。…って、ほぼまんまですけど(笑)。
この歌って、実は全然記憶になかったりして。
「Mind Game」というアルバムは、タイムリーに買っていないので、ほとんど聴いていないのです。

今日、ちょいと物色していて、偶然耳にしたのですが…なんとまぁ。この哀しさは、なかなかいいですよ。
最初のメロディの、フレーズの最後の音が上がるパターンは結構歌うのが難しそうですね。中山さん、声が…か、かすれてます…って、だからハスキータウン?(笑)…なんていうのは、ジョークですけど (^-^;;
ここらへんもう少ししっかりお腹で支えて歌ったほうがGoodな気がしますが、しかしね。この歌の哀しさ、というか儚さは、中山さんの声だから…っていうのもあるでしょうね。こういう「哀しげな」歌がとても似合う声です、中山さんの声は。
そして、びっくりしたのは、いきなり始まるんです、これ。前奏なし。突然、切なげな中山さんの声を聴かされると、う〜ん、哀しい(苦笑)。そして、最後がまたびっくり。中山さんの声で終わるんです。「〜行くわ…」と余韻を残しながら。そして、雷と雨の効果音が続く。歌的にはほんの2分程度のえらい短い歌ですが………切ないです。ホント。
この演出は、かなりいい感じです。
アレンジついでに、かなり気に入ったのが、間奏だったりします。最初に聞いて、なんかすごく「寒さ」を感じました。「真夏」が過ぎて「秋」かなぁ?ってな気もしますが、なんか寒かったのです。なぜかなぁ、と思ったら、原因はこの間奏でした。ちょうど入っている8分音符(?)の弦系の刻みが、ビバルディの「四季」の中の「冬」に似ているのです。その雰囲気のせいかなぁ、この「寒さ」は。…それとも、私の気分のせいかも?(苦笑)
パン・フルートのメロディも、泣かせるね。ちょこっとスタッカートぎみに明るく見せようとしているところがまた健気で(笑)。思わず、フルートをとり出して、自分でも吹いてみた(爆)。

さてね、歌詞なんですが。
huskyって、どういう意味で使っているのでしょう。
かすれた街?がさつな街?がっしりした街?ハスキー犬のいる街?といろいろ考えながら(笑)。ああ、そうか、「空虚な街」かと思いつきました。
一つの「恋」に燃え尽きた女性の、戻ってきた「街」。それは、もちろん、恋をする以前にずっと過ごしてきた「街」なのだけど、何かが足りない「街」。その世界は、もう既に元の世界ではなく、空虚な、何かしら足りない世界となってしまったということなのでしょうね。それでも、主人公は、なにごとも無かったように元に戻る決心をする。一人で歩いていく決心をする…。
強いなぁと思います。…っていうか、それが当たり前なんだろうけど(苦笑)。
すごく燃えるような恋だったんだろうなと想像します。短い間に燃え尽きた恋だったんだろうなと想像します。終わったあとで残ったのは、空虚な自分だけ。過ぎていく季節を拒み続ける、抜け殻な自分。でも、いつまでもそれじゃいけないから、歩き出そうと決心する…。
歌は短いので、詩ももちろん短いのですが…想像させてくれますね。うん。

こういう歌は、きっと経験でかなり感情のこもり方が変わってくると思います。18歳で歌っていた歌だけど、いろんな恋を重ねた30代の中山さんに是非もう一度歌って欲しい1曲です。



OVER THE MOON