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勝手に Short Story
〜歌の中の風景〜
Baby Pink Moon
by みーこさん
(作詞:中山美穂/作曲:竹下欣伸)
あーあ、またやっちゃった・・・。大学の友達と大喧嘩をした。謝ろうとしても口も聞いてくれなかった。
言葉っていうのはホント難しいもので誤解をすぐに招いてしまう。
自分が相手の事を思って付いた嘘。嘘が間違いだなんてことは分かっている。それでも嘘のなかにある何かに気づいて欲しかった。
帰り道、真昼の空は蒼い月が浮かんでいる。私の心のような悲しみの蒼。
家について布団に顔をうずめていたら涙が止まらなくなってしまった。
するとそばに置いてあった携帯が鳴った。
ふと目をやると、学校の友達とはちがう幼馴染の女の子の名前が表示されていた。
彼女と知り合ったのははるか昔、幼稚園のころ。けれど小6のころお互い引越しをして今はEメールやこうやって携帯で連絡をとっている。もっとも前は手紙だったけど。こうやってもう10年近く連絡を取り合っていることに我ながら凄い と思ってしまう。
「もしもし〜し!!元気してたぁ?」
泣いていたいたことがばれないように私は明るく出た。
「元気〜?久しぶりだねー。」
彼女の声にはホッとさせられる。
「うん。私は元気だよ。」
私は赤く腫れあがってしまった目からまだこぼれる涙をふきつつ答える。
「もう直ぐ大学夏休みだよね?会おうよ―。」
しばらくそんな会話が続いた。距離も時間も感じさせない、彼女との会話は安心する。
「今、車校なんだけどさぁ、暇だからかけてみた。」
車校ってそんなに暇なのか・・・?既に私達は30分以上喋っている。
喧嘩を誰かとしているという時は不思議なもので私の場合、自分という人格まで自信が無くなってしまう。だから用がなくても電話を掛けられるとなんだか慰められてしまった。
だって暇つぶしに自分を必要としてくれる友達がいるんだもの。
外をみるともう暗くなりかけている。
「あ、もう遅いからまた・・・。」
といかけたとたん、彼女は
「何か元気ないね。何かあった?」
見透かされていた。気がつくと私はまだ泣いていた。
彼女に全て話して、
「私、もう仲直りできないかも・・・。」
彼女の前で今日、始めて愚痴をいった。
すると彼女は、
「やめちゃえばいいじゃん、友達。もう絶交しちゃえば?」
・・・簡単に言われた。私がこんなに悩んでいるのに・・・。
「できるわけないでしょ!?大事な友達なんだから!」
頭にきてつい彼女に当たってしまった。
しばらくの間2人に沈黙があった。
「・・・アハハハハ!」
彼女が笑い出したのだ。一体どうしたというのだろう。
「アンタ、わかってんじゃん。」
「え・・・・?」
私にはどういうことかよくわからない。
「仲直りしなきゃいけないってこと。友達でいなきゃいけないってこと。わかってんじゃん。ほら〜、喧嘩と仲直りなんてセットだって。うちらだって相当喧嘩したよ?仲直りできないんだったら10年も連絡とりあってないじゃん。」
・・・・・。そのとおりだ。許してくれなきゃ許してくれるまで。仲直りできるまで頑張らなくてはいけない。
泣いていても仲直りなんかできない。友達をやめるなんて出来ない。・・・そんなことに気づかせてくれた。
「じゃあ、遅いからもうきるね。」
彼女が電話を切った。
私は窓をそっとあけて空を見た。
今日は綺麗な月がはっきり見える。
私は何故か月の色がピンクに見えた。
あったかくて優しい、ベビーピンクムーン。
<fin>
※わかるとは思いますが、「車校」とは、自動車学校(教習所)のことです。念のため(笑)。
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