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勝手に Short Story 〜歌の中の風景〜



Witches ウィッチズ
(作曲:CINDY/作詞:康珍化)


夏休みが始まる少し前。幼馴染の明生ちゃんが同じクラスの麻美と付き合い始めた-----。

****    ****


「カオリ、明生くん、麻美と付き合ってるんだって?」
夏休みの図書館。ぼんやりと問題集を眺めていると、涼子に声をかけられた。
…そんな。口に出して言われるとなんだか憂鬱になる。
「…毎日、明生ちゃん家まで遊びに来てるわよ」
明生ちゃんの家は隣であり、明生ちゃんの部屋は私の部屋の目と鼻の先だ。二人は部屋で仲良くお勉強。お陰で私は家にいたくなくて、折角の夏休み、学校までわざわざ足を運んでる。
「いいの?カオリ、ずっと好きだったんでしょ?」
…いいの?と言われても。いいわけないけど、どうしようもない。
そりゃ、幼馴染って立場に満足して何も行動を起こさなかった自分が悪いといえばそうなのかもしれないけど。今さらどうしようもない。今さら。
「月の魔法って知ってる?」
「月の魔法?」
涼子の顔を覗き込む。
「月夜の晩に、特に満月の晩に願い事をすると願いが叶うらしいよ、例えば…」
ふむふむ。思わず熱心に聞いてしまう(苦笑)。…しかし、そりゃ、呪いじゃないか?なんて思ったり。そりゃ、藁人形とかじゃないけど、満月にお願いごとねぇ。ふふふ。なんか真剣に聞いてしまった自分に思わず笑ってしまった。
「そんなん、あるはずないじゃん。マンガじゃないんだから。涼子って意外〜(笑)」
「わかんないよー。やってみる価値はあるかもよー。」
笑いながら涼子は行ってしまった。

満月にお願いごと?呪い?呪文?
ナンセンス!だいたい呪いをかけるには二人の写真が必要だけど、そんなんどうやって手に入れるのよ。無理無理(笑)。
とそこまで考えて思いついた。
…携帯があるじゃない。
携帯電話で撮って焼けばちゃんとした写真になるじゃない。
用意するのは写真だけでしょ?なんかできそうじゃない?
…なんとなく。なんとなくやってみようかって気分。
今まで何も行動したこと無かったけど(…って呪いをかけるってのはなんか間違ってるような気もするけど×××)。
次の満月の晩。明々後日までに写真を用意すること。
うふふ。なんだかワクワクしてきた。

****    ****


満月の晩。真夜中の公園。一人きり。こんなこと、涼子にだって言えやしない。
二人の写真は用意した。
部屋の窓から撮ったのでちょこっと遠め。でも、二人がきちんとうつってる。
焚き火。
火事にならないように、気をつけて。
まずは写真を破って二人を切り離す。そして、火の中へ。
呪文。なんだっけ?涼子に聞いたときにメモした紙をとりだす。

「Moon 麻美は電話でこう言ったわ。彼に手を出さないでってね。それは私のセリフなのに。」

ぶつぶつ言いながら呪文を唱える。

「Moon 麻美なんかいなくなっちゃえ!」

わははは。
なんだか笑いがこみ上げてきた。
こんなこと、真剣にやってみるなんてどうかしてる。
こんなの効くわけないのに。
どうせ明日も明後日も、また麻美は明生ちゃんの家に遊びに来るのだ。
いつも通り。何も変わらない。

****    ****


翌日、なんの偶然か麻美は明生ちゃんの家に現れなかった。
その次の日も。その次の日も。
どういうことなんだろう。
あれから家で見かけることは愚か、学校でさえも麻美の姿を見かけることは無かった。
なんでなんでなんで?
まさか、本当にいなくなっちゃったのでは?
どうしよう?
もしかして私のせい?
どうしよう?
どうしたらいいのぉ?


夏休みが終わり、麻美が転校したことを知った。
明生ちゃんは初めから転校するまでの間だけ付き合って欲しいと頼まれたそうだ。
…びっくりした。私が呪ったから、本当に灰になっちゃったのかと真剣に思った。
思わず苦笑する。

「なんだよ?お前、それ気になってたわけ?もしかして、俺にホレてる?」
ストレートに言われて思わず赤くなる。
「げ、マジかよ。冗談だろ?」
…冗談で交わせなかった自分が情けない(苦笑)。
「じょ、冗談に決まってるでしょ?!誰がアンタなんか!」
「だろうな、わははは」
大笑いする明生ちゃんを眺めながら。
ふぅ。私の想いが叶うのはまだまだ遠そうだ。
でも、今はいい。このままで。友達のままで。
だけど。近い将来、またこんな風にジダバタする日がくるんだろうなぁと思うと…ふぅ。

また、月にお願いしてみようかなぁ…。
なんて、ね(笑)。



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