旅行のススメ


冷静と情熱のあいだ(Rosso & Blu)
江國香織 & 辻 仁成(角川文庫)

この本については、ベストセラーだから、説明しなくても皆さんご存知だろうか。
「冷静と情熱のあいだ」という本は、主人公であるあおい側から書かれた女性版(江國香織著のRosso)ともう一人の主人公である順正側から書かれた男性版(辻 仁成著のBlu)という2つの物語で成り立っている。
こういう女性側から見た話、男性側から見た話と両面から書いてある物語は案外ありそうだけど、作者が違うというのは珍しいように思う。男性の気持ちは男性に、女性の気持ちは女性に書いてもらったほうがよりリアルになるといったところか。

お互いに「運命の人」と思いながらも別れてしまった二人の、別れてからのそれぞれの8年間が描かれている。
私は友達からの助言もあり、Rossoから先に読んだ。メインは、あおいと今の恋人であるマーヴの話が中心である。その中で、思い出したくないのだけど、心のどこかにいつも居座っている順正の話が登場してくる。江國さんのアプローチは、結構うまいと思う。最初から順正を登場させないで、思い出さないようにというあおいの心情が実にうまく出ている。共感。本当に好きになった人というのは、簡単には忘れられないし、2度と元に戻ることはないとわかっていても、それでも特別であり続けるものだと思う。誰でも、そんな人が心の奥にいるんじゃないかな?そういう思いが、とても共感できる作品だと思う。Bluの方は、わりとあおいの話が最初から説明的に出てくる。私にはここらへんがなんだか気になって。先にRossoを読んでしまったせいで説明的に思えるのかとも考えたけど、ここらへんが女性と男性の感じ方の違いなのかな?とも思える。Rossoの方により共感できるのは、私が女性だからだろうか?(笑)そんなこんなで、ワタクシ的には、Rossoの方が好きなんだが、Bluの方がより心に刺激的。というか、涙もろいワタクシ的に妙に涙腺を刺激してくれるのは、実はBluの方だったりして(笑)。
私は、こういう2つの物語がある時点で交錯するというストーリー展開、大好きなのだ。2つが交錯する点が早く登場しないかと、2冊目の方は一気に読み通した(笑)。

というわけで、まだ読んでいない方にアドバイス。Rossoから読んでみてはどうだろう。順正の話が最初見え隠れする話の構成も、あおいが説明的に登場する話の構成も、理由の一つではあるが、最後の締めくくりの書き方がBluを本当の最後とした方がより気分よく終われるような気がするので。なぜかは書かないけど、読めばわかると思う。

さてさて、このコーナーの趣旨は旅に出たくなるということだけど(笑)。
この物語の舞台は、なんとイタリアなのだ。Rossoの舞台がミラノで、Bluの舞台がフィレンツェで。どちらもそれぞれに表現されていて、充分イタリアに行ってみたくなるが、特にBluの方のフィレンツェに私は行ってみたいかな…。フィレンツェのドゥオモはこの物語のキーワードなので、絶対行きたくなるものの1つだと思うが、絵画好きの順正の行った美術館とか、絵の表情が語られている部分を読んだら、その絵を是非見たいと思うんじゃないかな?私は自分も絵画好きなせいか、フィレンツェの美術館に行きたくなった。または教会とか。

私は、今度映画を上映するということで、一気に2冊とも読んだわけだが、映画ではきっとイタリアの素晴らしい表情が撮影されているに違いないので、映画のコーナーで載せてもよかったかな…とも思う。が、本でよかったものは、生憎映画では失敗しがちなので、映画を見る前に本で書いておいた(笑)。この本、結構ワタクシ的には面白かったと思う。一緒に読んだ同僚は、「もっと感動すると思った」と言っていたけど(苦笑)。
それでも、「旅に出たくなる」の観点から(笑)、映画の方も非常に楽しみにしている(…って、もう公開されてるか(笑))。

それぞれの、「心の愛」を感じつつ、2冊一気に読破してみてね(笑)。



OVER THE MOON 2