ラスト・ハーレム 1999年 / 伊+仏+土合作 / 1時間46分 イタリアのとある駅構内のカフェ。 そこで電車を待っていた若い女性アニタは、ミステリアスな年老いた女性と偶然出会う。彼女は、静かに自らの人生を語りはじめた。 今世紀初頭のオスマントルコ。主人公サフィエは、イタリアから8歳でハーレムに売られてきた美少女。オペラに造詣が深く、3か国語に堪能で利発な彼女は、黒人の宦官ナディールの目に留まり、スルタンの寵姫になって権力を手に入れようと2人で手を結ぶ。計画は順調に進み、サフィエはついにオペラ好きなスルタンの心をとらえ、その寵愛を一身に受ける。サフィエ、ナディールの間にも、共犯関係を越えた禁断の愛が芽生えはじめて…てな感じのお話です。 なんて、上の紹介を読むと少し怪しげですが(笑)。 一応、場所はトルコです。トルコといっても、なんて風景がキレイなんだろう、とか、そんな感想は持てません。なぜなら、トルコでの光景は、すべて宮殿の中だから。ただし、撮影は、その大部分を実際の史跡を使っています。物語の舞台となっているのは、当時のスルタンの住居であったユルドゥス宮殿のハーレム。ハーレムそのものは、火災で消滅してしまっているのですが、宮殿の廊下や階段、皇太后の部屋、スルタン・アブデュルハミト2世の書斎、劇場、隊商宿、そして電力発電所などが使用されて、当時の雰囲気を充分に伝えています。さらに、イスタンブールやブルサのハマム(大浴場)とプールでも撮影が許可され、サフィエが黒人奴隷に香油でマッサージをさせる官能的なシーンなど、よりリアルに印象的に再現されました。衣装もかなり豪華に作られ、当時のハーレムに想いを馳せることができるはずです。 この物語は、少し構成が難しくて、現代の若い女性と年老いた女性の駅のストーリーではじまり、それが幻想的にハーレムでの語り部のストーリーへ、そして語り部が語るハーレムの女たちのストーリーへといわゆる入れ子式になっています。語り部が語るところが少し「千夜一夜物語」的なんですが。最初、これに少しとまどいました。語り部がハーレムの女たちに語っている部分と、語っているストーリーの中の部分と。ここらへんをクリアに理解できれば、わかりやすいのかな。 ワタクシ的に、一番興味深いところは、もちろん「ハーレム」という特異な世界も興味ありますが、なんといっても、3つの言語が飛び交っているところ、でしょうか(笑)。 まずは、イタリア語。最初の駅のシーンです。若い女性と年老いた女性が話をするのはイタリア語でした。あんまりなじみの無い響きですが(笑)。 次に出てくるのは、フランス語。サフィエと黒人宦官ナディールのセリフは、フランス語で語られるのです。この時代は、第一言語がトルコ語で、第二言語がフランス語だったそうで、フランス語の方がシックで垢抜けているとされる風潮があったそうです。監督いわく、サフィエとナディールは、あくまでより洗練された言語だからという理由で、それを使って会話するのです…だそうです(笑)。 そして、女性同志の言葉はもちろんトルコ語です。 今回の私の目的は、これがメインでした。トルコ語を聞くということ。 トルコ語は、発音的にはほぼローマ字読みなので、もっと聞き取れるかなぁ〜という期待があったのですが、いやいや、わからん、わからん(苦笑)。やっぱり速度が違いますねぇ。速くて、何がなんだか。たま〜に聞き取れると、おおー、知った単語が!と妙な感動に浸れるのですが(笑)。 ま、そんな具合に、聞きなれない言語にも、ぜひ注目(注耳?(笑))してほしいと思います。 麗しのハーレムの世界を、どうぞご堪能あれ(笑)。 |