朝鮮民謡の主題による変奏曲 作曲:ジョン・バーンズ・チャンス 朝鮮民謡の「アリラン」をご存知だろうか。 私が中学の頃は、音楽の教科書にのっていたので、あの「ア〜リラン、ア〜リラン」というところはわりとメジャーなメロディだと思う。朝鮮民謡の主題とは、つまりそれである。あの「アリラン」を変奏曲として仕上げてしまおうというものだ。 作曲者のJ.B.チャンスは、もともとはパーカッション奏者だった。彼は朝鮮戦争後に同半島に赴任させられた際に、有名な「アリラン」の旋律を知ってそのエキゾチックな味わいに魅了され、やがて作曲家として独立したあとに、この主題をもとにさまざまなリズム処理を加えてユニークな変奏曲を書き上げた。パーカス奏者だったからか(どうかは知らないけど(苦笑))、非常にパーカッションの特徴的な音が印象的に仕上がっていると思う。 まずは穏やかな感じの主題提示。クラリネットから始まり、いろんな楽器に旋律が吹きつがれていく。ホルンの流れるような音が静かな海にも似ていて。心落ち着く曲に仕上がっている。ゴングに続いて、木管やテンプルブロック、シロフォンなどによる少し速めな第一変奏の序章。ここはパーカッションが印象的だ。金管低音に引き継がれ、ラプソディックな激しさで次へと続いていく。第二変奏は、穏やかなオーボエの音が響き、ムーディなメロディが続く。やがて静寂の中から夕焼けを思わせるトランペットのソロが哀愁に満ちた旋律を吹く。そして、マーチ。勢いのある行進。スネアの響きが特徴的。間にティンパニの刻む3連符にのって、回想するような木管のコラールが現れるが、またスネア、テンプルブロック、ビブラフォンとパーカッション群によってマーチのリズムが形成され、金管、木管が加わり、スケールの大きなトゥッティとなって全曲を閉じる。 これは、1966年に全米バンド・マスター協会の作曲賞を受賞したことから吹奏楽のレパートリーとして広まり、現在では世界的な人気曲として演奏機会も多い。何を隠そう、私も演奏したことがある(…というか、紹介しているのはほとんど演奏したことがあるやつばっかりなんだけど(苦笑))。 ごく普通の民謡でも、変奏曲にすると実に面白い。アレンジによって、いろんな雰囲気が楽しめる。 7分程度の曲なので、機会があったら、ぜひ聴いてみてほしい一曲ですね。 <ご参考>…当方所有のCDです(苦笑) 佐渡 裕&シエナ・ウィンド・オーケストラ「ブラスの祭典」 佐渡 裕(指揮)/シエナ・ウィンド・オーケストラ 1999年録音(発売元:Warner Music Japan) |