連作交響詩「我が祖国」 作曲:スメタナ スメタナの代表作「我が祖国」は、恐らく誰もが一度は聴いたことがあるでしょう。このタイトルでわからなくても、「モルダウ」といえば、ピンと来るかな?中学校の音楽の時間に、歌詞つきの「モルダウ」を習いました。 「〜なつ〜かし〜い川の〜 な〜が〜れ〜、僕たちの誇り〜モルダ〜ウは〜♪」 なんと、今でも歌えます(笑)。 スメタナの祖国といえば、チェコです。彼はチェコの民族性に根ざした音楽を書き続けましたが、この曲を作曲していたころ、聴覚を失うという悲劇に見舞われます。しかし、そんな事態をまったく感じさせない力強さと繊細な色彩感にあふれた作品になっていると思います。 さてさて。実は先日、随分お久しぶりにコンサートに行ってきました。東フィルの定演(in 名古屋)ですが、メインでこの曲を演奏してくれました。演奏を聴きながら、私が思い浮かべた風景なんかを書いてみたいと思います。 第1番:ヴィシェフラト(高い城) 私の中のチェコ=ボヘミア地方の印象は、生い茂る木々と草原です。その中で、石造りの茶色っぽい中世の城…メルヘンに出てくる王子様とかがいそうなきらびやかな城というよりは、ドイツに多い城塞のようなイメージ。石造りの壁には、蔦なんかがからまってたりして。そして、木々をざわめかせる風…。 最初のハープがとても印象的に響いていて、こんな情景を浮かべました。 このタイトルは、プラハの南にある実際にある城の名前のようです。スメタナ自身の言葉によると、「伝説の吟遊詩人のハープが聞こえ、城の栄枯盛衰が語られる。今や廃虚となった城からはハープがこだまする」だそうです。 第2番:ヴルタヴァ(モルダウ) モルダウとは実はドイツ語読みで、チェコでは「ヴルタヴァ川」といいます。 関東を代表する川は「利根川」、中部では「木曽川」、関西では「淀川」…ってちょっと規模が小さいか(苦笑)。もとい、オーストリアを代表する川は「ドナウ」、フランスでは「セーヌ」、ドイツでは「ライン」であるように、チェコといえば「モルダウ」です。モルダウは、南ボヘミアを源流として北上し、プラハを経てエルベ川に合流し、ドレスデンを通り、北ドイツのハンブルクへと抜けていきます。スメタナは、この流れの様子を見事にオーケストラで表現しています。 冒頭でも歌いました(笑)が、「我が祖国」の中では非常に有名な曲です。そして、有名であることに納得する、雄大な旋律だと思います。 時に激しく力強く、時に穏やかに雄々しく、流れていく光景が目の前に浮かんできます。 最初のフルートがいい!途中出てくるトロンボーンがカッコいい! 非常に、奥行きのあるスケールの大きな音楽です。 さて、東フィルのパンフレットで、桐朋学園大学助教授の野本氏は、次のように「モルダウ」について説明しています。 モルダウの2つの源流のうち、最初のもの(クシェメルナー川)がフルートで「チョロチョロ」と流れ出しますが、そのとき、ハープがひとしずくの「ミ(ホ音)」を垂らしているのです。そして、水が撥ねているかのような、ヴァイオリンのピッツィカート。人知れず森のなかで川は始まって、2人のフルートがまるで一本であるかのように川の流れを紡ぎだしていきます。やがてモルダウのもう一つの源流(ヴィドラ川)がクラリネットで表されて合流し、弦楽合奏による「モルダウ川」になっていくのです。 これぞ、まさしく、音楽から感じる「旅」!私の言いたいことを的確に説明されていたので、抜粋引用させていただきました。 このように、音楽を聴きながら、モルダウ川をイメージしていただけたら、この企画は大成功です!(笑) 第3番:シャ−ルカ シャールカとは伝説の女性。恋人に裏切られたことをきっかけに男への復讐を誓い、仲間のアマゾネスとともに兵士たちの一考を皆殺しにする…という凄惨な伝説がこの曲の内容です。 この曲は、はじめて聴きました。 いや、なんともドラマティックな展開…。兵士を皆殺しにするシーン、想像できちゃいました。多分、あのあたりのメロディに違いない…(苦笑)。うるさいくらいに激しいっす(苦笑)。 第4番:ボヘミアの森と草原より 「我が祖国」を演奏するといって、多いのは、恐らく1番、2番、そしてこの4番じゃないかと思うんですが、いかがでしょ。 1番のところにも書きましたが、私のボヘミアのイメージは、森と草原なのです。鬱蒼と生い茂る森、木々をざわめかせる風、隙間から差し込んでくる光、あるいは広がりゆく緑の草原…。実にこの曲にピッタリなのです(笑)。 スメタナはチェコのボヘミア地方の生まれです。おそらく彼にとっては、故郷の森は馴染み深い風景なのでしょうね。 途中、木管が牧歌的な旋律を吹きますが、平和なのどかな感じをよく表しています。終盤では、ポルカのリズミカルな部分も登場します。目を閉じて、イメージしながら聴いていただきたいですね。 第5番:ターボル 第6曲:ブラーニク ボヘミア南部の町ターボルは、15世紀の宗教戦争の中心だったフス族の町でもある。 フスというのは、世界史でも出てきたのでご存知の方も多いと思うが、15世紀のプラハ大学の神学教授で、ベーメン(ボヘミア)民族運動を指導、コンスタンツ公会議に喚問、異端とされ焚刑となる。その後、フス派ベーメン住民は蜂起するが、そのときたてこもった丘の名前が第6曲のタイトル ブラーニクである。この2曲は、続編となっている。 第5曲では、フス族の讃美歌「汝らの神の戦士たれ」の一節が主題として曲中で使われ、戦闘のすえフス族が勝利を収める様子が描写されている。 第6曲では、第5曲と同じ讃美歌の主題が金管で鳴らされる。行進曲風の部分や牧歌的なエピソードなどを経て、祖国をたたえるのにふさわしく、高らかな讃美歌が再現される。 この2曲は今回はじめて聴いたのだけど、吹奏楽をかじったワタクシ的には、非常に面白いかも…なんて、思ってしまいました(笑)。 てなわけで、ボヘミアの風を少しでも感じていただければ、幸いです(笑)。 |