旅行のススメ


交響曲「メキシコの祭り」(コンサート・バンドのためのメキシコ民謡による交響曲)


作曲:H.オーウェン・リード

この曲に出会ったのは数年前。私が吹奏楽団でフルートを吹いていた頃。
演奏会で吹いた曲(…紹介してるのはほとんどそうですが(爆))なのだけど、その中でも一番気に入っている曲です。
ブラス好きの人たちなら、絶対知っている名曲。これは絶対ご紹介したかったのです(笑)。

メキシコマップ さて、オーウェン・リードですが、アメリカのミズーリ州オデッサで生まれたアメリカ人。1976年に名誉教授として勇退するまでの37年間、ミシガン州立大学の音楽科教授、音楽理論および作曲科主任として教鞭をとっていました。
彼の作品でウィンド・オーケストラ(ブラスバンド)のための作品はいくつかあるのですが、その中で一番有名といえるのがこの「メキシコの祭り」なのです。
この曲は、グッゲンハイム財団の奨学金を得て、1948〜49年にかけて5ヶ月間に及ぶメキシコの民族音楽の現地研究を行った成果であり、スチュアート・チェイスの著作「メキシコ」にインスピレーションを得てかかれた作品です。

リードのメキシコ滞在は、クエルナヴァカに2ヶ月、チャパラ周辺に2ヶ月、あとはメキシコシティ、アカプルコなどへの旅行でした。
この曲に使われた民謡の多くは、グアダラハラとチャパラの民族音楽からとられています。使われた民謡は次の通り。

「EL TORO」…メキシコの闘牛場でよく演奏される。
「AZTEC DANCE」…某音楽学者が山間部の部族からリサーチして手書きでまとめたアステカ族の舞曲。
「LIBER USALIS "ALLEUIA, VIDIMUS STELLAM"」…チャパラの大聖堂でしばしば聴かれたグレゴリオ聖歌。
「EL SON DE LA NEGRA」…ハリスコ州のマリアッチがよく演奏する民謡。

曲は3つの楽章からなり、それぞれに特徴があります。

第一楽章「プレリュードとアズテック・ダンス」
導入部のプレリュードは、アレグロ・マエストーソ。祭りの開始を知らせる鐘の音から始まります。教会の鐘。そして、次に咆える(笑)のは、ホルンのファンファーレ。続いて、ドンドンッ!とBドラの花火の爆音。ファンファーレは高鳴り、人々が集まって、酒をくみかわしながら、陽気に浮かれ騒ぎます。やがて遠くから闘牛士の音楽「エル・トロ」が聞こえ、全合奏となります。そして、グアダラハラ地方に伝わる「アズテック・ダンス」へ。この曲は特徴的な民謡で、第一楽章の山場。色鮮やかな羽飾りをつけ、仮面を被った踊り手が踊る強烈なリズムによって、祭りの気分は否応なく盛り上がっていきます。

第二楽章「ミサ」
教会の鐘の音に始まるこの楽章は、ラルゴのゆったりとしたテンポで演奏される敬虔な祈りの楽章です。第一楽章での祭りの大騒ぎとは別に、教会の中では、ミサにより、厳かに祈りが捧げられています。過去の1年を感謝し、これからの1年を祈る厳粛で静かなミサで使われているのは、チャパラ地方の教会でよく歌われるグレゴリオ聖歌「リベル・ウサリス」からとられたものです。まずはトロンボーンの3音がテーマを提示し、次第に数がふえ、オルガンと合唱を加えたような大きな祈りへと膨らんでいく。全合奏でのコラールのあと、やがて静まっていき、メノ・モッソでホルン・ソロが朗誦風のフレーズを奏して曲が終わります。

第三楽章「カーニヴァル」
アレグロ・コン・ブリオで始まる華やかな終楽章。舞台はまたふたたび町の中へと戻っていきます。今や祭りは最高潮で、サーカス、闘牛、市場からのざわめきや華やかな楽隊のファンファーレなどで街中が沸き返り、導入部に続き、アレグロ・コン・スピリトでマリアッチの民謡「エル・ソン・デ・ラ・ネグラ」の調べが流れます。その後、再現部となり、前楽章で聴かれたフレーズも現れ、祭りのすばらしい興奮が、クライマックスへと導いていきます。

てなわけで、現地の民謡がふんだんに使われ、かなりメキシコの雰囲気が出ていると思います。
ワタクシ的には、「アズテック・ダンス」と「エル・ソン・デ・ラ・ネグラ」が出てくるあたりが好きなんですが、こんな祭りを一度体験してみたいですね。





OVER THE MOON 2