にゃ〜、なつくの巻  

その日、家に帰ると、驚くことが起こった。
いつものように、窓をのぞいただけなのに、仔猫が寄ってきたのである。
寄ってきただけでなく、手を伸ばすと、その手をなめたのである。
……?
おまえ、いったいどうしたの?
???でいっぱいになる。
「お母さ〜ん?」
母を呼ぶと、「だいぶ慣れたでしょ?」と言う。
どうも、お昼間に時間をかけて、遊んでやったというのだ。
時間をかけて?(苦笑)
おいおい。
母は、動物を飼うことにはいつも反対のはずだ。もっとも、それは死んじゃ うのが悲しいからなんだけど。
仔猫が急接近したので、思わず腰がひける。
「なんだ、触れないの?(笑)」
……。
最初にも書いたが、はっきり言って、動物は得意ではない。もちろん、母 もそんなことは承知のはずだ。
ちょこっとだけ、悔しい(苦笑)。
「だってさ。」
ちょこっとは触れるけど、抱き上げたりすると、つぶれそうで怖いのであ る。もっとも、そんなことはないのはわかってるんだけど(苦笑)。

それから、仔猫は窓を開けるだけで寄ってくるようになる。
その場にいなくても、「にゃ〜」と声をかければ、どこからともなく走っ てくる。
母が何かにつけて「にゃ〜、にゃ〜、にゃ〜、にゃ〜」と呼ぶので、どう も自分の名前は「にゃ〜」だと認識してしまったようだ。
私も「にゃ〜」と名づけたんだな…と思っていたのに、母は「そろそろ 名前をつけなきゃね」なんて、とぼけたことを言ったりする。
なんだかなぁ(苦笑)。

この頃は、私もすっかり慣れて。
外に出てしゃがんでいると、ひざによじ登ってくる。
ひざに抱いてなでてやると、喉をゴロゴロ鳴らして喜ぶ。
にゃ〜?と声をかけると、くりくりの目をこちらに向けて、「にゃ〜」と 首をかしげる。
とにかく寂しがりやみたいで、すぐに寄ってくるところがホントにかわい い。猫がこんなにかわいいなんて思ったのは、きっと初めてに違いない。
自分がこんなに触れるようになるとも、ホント思わなかった。


1999.07 up
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