証言その3 駅に遊びにくる猫  

近所のいくつかのお店で、「にゃ〜くんを知りませんか」というチラシを貼ってもらおうとお願いしてまわった。
駅前の友人のお店で貼ってもらったとき、お兄さんが「あの猫じゃない?」と言った。
どうも時々首輪つきの黒猫が、駅のロータリーのあたりでフラフラしているというのだ。首輪つきというところで、これはきっとにゃ〜くんに違いないと思った。
お兄さんに、また見かけたら電話をくれるようお願いした。

お願いしたものの、どうも気になって仕方なく。
黒猫は21時頃現れるという話だったので、一旦家に帰ってから、何度も駅まで見に行った。お兄さんとはおそらく面識がない(お願いしたのは母)のでばれてはいないだろうと踏んでいたが、もしかしたら、私のことを知っていたかもしれない。そのくらいの時間になると、お兄さんはお店の前の掃除やゴミの始末のために外で仕事をしているので、私はなるべく顔を合わさないように気をつけていた。

父に駅に出没する首輪付黒猫の話をしたら、失踪したときはそんなに気にしてる風ではなかったのに、妙に嬉しそうに、

「なんだ、じゃ、あいつは家出して、駅でふらふら遊んでるんだな」

なんて話していた。
一緒にコンサートに行った日は、ちょっと駅をまわってから帰ろうかと、わざわざ車で駅付近をグルッとまわってから、帰ったりした。

しかし、それから、その首輪付黒猫は、一度も駅には現れなかった。


2001.12.10 up
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