最後に
にゃ〜くんは、遠い目をしていることが多い猫だった。
屋根のてっぺんにのぼり、木に登り、遠くをじっと見つめていることが多かった。
いつか、広い世界に飛び出してやるぞ…なんて思ってたのかな?
なんてことをフッと思ってしまった。
会社から帰ると、裏口の塀の上で寝そべって待っているにゃ〜くんを、屋根の上で昼寝をしているにゃ〜くんを、ドアをあけると私の横をすり抜けて真っ先に家に入っていくにゃ〜くんを思い浮かべては涙していた。
この最終回を書く決心をするのにだいぶ時間がかかってしまった。
いなくなったときはもとより、それから半年くらいは、「にゃ〜くん」と口に出すだけで涙が出た。これを書いている今、1年以上経ってしまった今でさえ、書きながら涙を流している自分がいる。
なかなか吹っ切れないものだな…と思う。この件については、なぜかいつまでも後ろ向きにイジイジしてしまう。
最近はようやく「いなくなっちゃったんです」と泣かずに口に出せるようになった。知り合いの猫でやっぱり行方不明になった子がいて、1年経って帰ってきたとか、1年半経って帰ってきたとか、帰ってくる猫の話をいろいろと教えてもらった。もしかしたら、にゃ〜くんは帰ってくるかも…なんて、いつも思ってる。
先日、電車の中から、遠目に見てにゃ〜くんそっくりのピンクの首輪をつけた黒猫を見かけた。
自分の駅で降りて、思わずその猫を探しに歩いてしまった。一駅分近く結局歩いたが、見かけた家に辿り着くことができなかった。その猫は、まわりに人間の家族がいた。飼い猫のようだった。
もし、その猫が本当ににゃ〜くんだったとしたら、きっと幸せに暮らしているんだろうなと思う。もちろん、違ってるかもしれないけど(苦笑)。
にゃ〜くんと一緒に過ごしたのは1年半だったけど、それでも、一緒に過ごせて本当に楽しかったと思う。
私にとっては、非常に意義のある1年半だった。
こういうカタチで、こんなに早く最終回を迎えることになるとは思ってもみなかったけど、やはりそろそろ気持ちに区切りをつけなければいけない頃だと思う。
いつまでも、私の心の中で、にゃ〜くんは生きています。それでいい。
でも、帰ってくるのなら、いつだって温かくみんなで迎えてあげるからね。
待ってるよ、にゃ〜くん。
最後に、拙い文章を読んでくださった皆様に感謝をこめて。
最後まで、ご購読ありがとうございました。
sachi拝
2001.12.10 up