証言その6 隣のおじさんの話  

土日は会社が休みだったので、近所に探しに出た。ふらふら散歩状態だったけど、家の近所のあらゆる方向に行ってみた。10年以上住んでいて、初めて通る道なんかもかなりあった。同じ場所でも、時間が異なれば、もしかして見つかるかも?!なんて期待して、早朝、午前中、お昼、午後、夕方、夜とあらゆる時間帯に探しに行った。
会社帰りは、30分程度、遠回りして帰った。
どんなに歩いても、にゃ〜くんはいなかった。

この近くには、飼い猫たちもたくさんいることに気づいた。人懐っこい子、逃げちゃう子、いろんな子がいた。にゃ〜くんはどこまで遊びに行ってただろう。
野良猫とつるんで遊んでいたから、もしかしたら、多少範囲は広かったのかな?
どの子までがにゃ〜くんと知り合いなのだろう。いろんなことを考えて歩いた。

ある土曜日。母と一緒に探しに行った。
にゃ〜くんと叫ぶことはさすがにできないので、にゃ〜くんに気づいてもらえるよう、小声で歌いながら歩いた。
途中、出会う猫たちみんなに話し掛けた。

にゃ〜くんに会ったら、心配してるから早く帰るように、伝えてね。

ちょこっと遠くまで歩きすぎたかな?一応O公園の方も見てこよう。
O公園は例の事故現場の目と鼻の先である。
思い切って、母に聞いてみる。

「ねぇ、こんなとこまで来ると思う?たとえば、あの道をまっすぐ行って、産業道路を渡ろうと思ったりするかなぁ?」
「ここまでは絶対来ないと思うよ。かなり遠いから。」

思ったとおりの答えが返ってきた。
そうだよね…とココロの中で安心する。そうだ、あの猫がにゃ〜くんであるはずがない。

O公園付近では2匹の猫に会った。やっぱり話し掛けておいた(笑)。
普段通らない散歩道の方から抜けようか。こっちの方が猫がいそうだし。
少しうっそうとした道を選んで歩いた。すると、もうすぐ出口というところで、大きなヘビを見つけた。

う、うわぁ。

思わず2人して、走って逃げ戻った。
そういえば、このあたりは、友人がつい先日マムシに噛まれたあたりである。
(彼女は一ヶ月近く入院していた。)
にょっ?と振り返るヘビを思い出して、身震いした。

そういえば、にゃ〜くんは細ッこいヘビとも格闘してたけど、こんな太いやつだと勝てないだろうね?
そこらへんに鳥の羽とかが落ちていたので、なんだか心配になった。

家に戻る途中、温室で隣のおじさんに会った。
今、ちょっと探してきたんですけどね…という話をすると、おじさんもいつも気にしてるんだけどね…とおっしゃった。そして、猫を見かけるたびに、にゃ〜くんを知らないか聞いているという。
…またしても、同じことを(笑)。

おじさんににゃ〜くんがいなくなった当日の様子をうかがった。

9月26日、その日もやっぱり午前中は温室に現れたそうだ。温室備え付けのキャットフードを出したが、お腹がいっぱいみたいで、いらないといった。めざしを出してあげると、2匹ほど食べたとか。そのままふら〜っとどこかへ行ってしまい、それっきり姿は見ていないという。
おじさんとおばさんはにゃ〜くんがくると、一緒におやつにしていたそうだ。
あれから、にゃ〜くんが来ないので、とても淋しがっていた。


2001.12.10 up
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